あるご葬儀の話
「うどんが食べたい」—おばあちゃんの想いを形にした家族の温かな葬儀
つい先日、私が病院にお迎えに伺ったときのことです。病室には、12〜13人ほどのご家族が集まっておられ、その中心にはおばあちゃんの介護を最後まで担当していたお孫さんの姿がありました。お孫さんは、おばあちゃんの最期の日々について親族の皆さんに話をしていたのです。
「この春までは本当に元気だったけど、口から物を食べられなくなってから体調がどんどん悪くなっていった」と、エピソードを交えながら語られていました。その中でも、特に印象的だったのが『うどんが食べたい』というおばあちゃんの一言でした。お孫さんは「その声が今でも耳に残っているんです」と、目に涙を浮かべながら話されていました。
おばあちゃんの願いを形にした提案
この話を葬儀の打ち合わせの際に思い出し、私はお孫さんにこう提案しました。
「祭壇におばあちゃんの好きだったうどんをお供えしませんか?」
その言葉を聞いた瞬間、お孫さんの顔がパッと明るく輝きました。「そんなことしていいんですか?できるなら、おばあちゃんがすごく喜ぶと思います!」と、驚きと喜びが入り混じった声で答えてくださいました。
その一言をきっかけに、ご家族からも次々とアイデアが飛び出しました。「若い頃は美人で有名だったから、その頃の写真を飾りたい」「おじいちゃんと仲が良かった頃の家族写真を見てもらいたい」「入院する前に行った家族旅行の写真も出したい」など、家族みんなで意見を出し合いながら、おばあちゃんらしい祭壇を作り上げていきました。
想い出がつながる温かな通夜と葬儀
通夜と葬儀当日、祭壇にはおうどんの供え物、家族の思い出の写真、そして故人様が大切にしていた愛用品が並べられました。その光景はとても温かく、参列したご親族の皆さんの心を自然と和ませてくれたようです。
しばらく会っていなかった親族同士が思い出話に花を咲かせる様子が見られました。「あの頃はこんなことをして怒られたな」「このときはまだ誰々が生まれてなくて、みんなのお下がりがたくさんあったよね」など、口々に語り合い、笑い声があがることもありました。これまであまり接点のなかった兄弟やいとこたちが久しぶりに顔を合わせ、故人様を偲びながら昔話をしている様子は、家族のつながりを再確認する機会にもなったようです。
葬儀が終わった後、参列された方から「今回の葬儀は、悲しいけどすごく温かい気持ちになった」「おばあちゃんらしい式だった」「これまで参加したどの葬儀よりも印象に残った」というお言葉をいただきました。
葬儀は「お別れ」ではなく「感謝の場」
葬儀は、単なるお別れの場ではなく、「これまでの人生にありがとうを伝える場」であると考えています。悲しみの中でも、温かい思い出を語り合う時間が持てた今回の葬儀は、まさにそれを象徴するものでした。大勢の親族が「おばあちゃんのおかげで久しぶりにみんなで集まれた」と話されている姿を見て、葬儀をサポートさせていただいて本当に良かったと心から感じました。
葬儀は家族にとって人生の一区切りであると同時に、家族のつながりを深める大切な機会でもあります。「ああ、故人らしい葬儀だったね」という言葉が、ご家族の口から自然に出るような葬儀をつくるために、私たちセレモニーサポート・オンリーワンはこれからも全力でサポートしてまいります。